「CGのグルメノート」全ての宅麺レビュー

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2025年10月12日

東京・四谷荒木町の名店「一条流がんこ総本家 分家」の紫蘇塩ラーメンを宅麺でいただきました。
数々の宅麺を試してきましたが、この一杯はまさに別格。封を開けた瞬間から立ち上がる香りがすでにただ者ではなく、自然と胸が高鳴りました。

丼に注いだ瞬間、澄み切ったスープの美しさに息をのむ。透き通った黄金色のスープの表面に、油の膜が静かにゆらめき、レンゲを入れた途端に紫蘇の香りがふわっと立ち上がる。その香りは派手さこそないものの、まるで上質な和食の一品を前にしたときのような静謐さを感じさせます。

一口すすると、まず紫蘇の上品な香りが軽やかに広がり、その奥から魚介の香ばしさと塩の旨みが追いかけてくる。紫蘇の酸味はほとんど感じず、あくまで香りとして全体を包み込む役割。出汁の深みが驚くほど厚く、塩ラーメンとは思えないほどの満足感があります。淡麗なのに物足りなさがまったくなく、静かな強さを感じさせるスープ。まさに「がんこ」の哲学がそのまま液体になったような一杯です。

食べ進めるうちに、紫蘇の香りは形を変えていきます。最初は清涼感、次第にスープのコクと混ざり合い、最後は鼻の奥にほのかな香りが残る。まるで一杯の中で香りのストーリーが展開しているようで、最後の一口まで飽きることがありません。

麺はやや細めのストレート。パツッとした歯切れの良さと、しなやかなコシを両立しており、スープとの相性は抜群。細いのに存在感があり、スープの塩味や出汁の旨みを絶妙に抱き込みます。最後までのびることなく、食べ終えるまで完璧な一体感を保ち続ける。こうした麺の完成度の高さも“がんこ流”の魅力の一つ。

チャーシューは肉感のある仕上がりで、噛むたびにじゅわっと旨みがにじみ出てくる。魚介系のスープに溶け込むことで、全体の香りとコクに厚みを加えており、一枚でラーメン全体の印象を引き締めている。

そして驚くのは、この完成度を自宅で再現できるという事実。湯気とともに立ち上る紫蘇と出汁の香りに包まれながら丼を前にすると、もう完全に名店のカウンターに座っているような錯覚に陥る。家庭でここまで上品で奥行きのある味に出会えることは滅多にありません。

食後には、紫蘇の香りがほんのり鼻に残り、心がすっと洗われるような余韻が広がる。
「がんこ」の名を冠するにふさわしい、凛とした佇まいと芯の強さを持った一杯。
宅麺で食べられるラーメンの中でも、これは間違いなく最高峰の一角に入る完成度でした。

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