店主インタビュー

【ラーメン大賞】『荻窪中華そば 春木屋』丹代表「第12回お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー」SPインタビュー


『第12回お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー』において、ラーメン大賞を獲得した「荻窪中華そば 春木屋」の丹有樹代表にスペシャルインタビューを実施。丹さんが春木屋から受け継いだ使命と未来への想い、「名代 富士そば」を展開されているダイタングループの代表である丹さんならではの視点から見た「ラーメン業界」についても語っていただきました。

2023年02月02日 更新
【ラーメン大賞】『荻窪中華そば 春木屋』丹代表「第12回お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー」SPインタビュー - サムネイル

愛される味のまま


―この度「第12回お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー」にて、「中華そば」が見事にラーメン大賞を受賞されました。まずは率直な感想を教えてください。

 

ありがたいことだと思っています。



授賞式でもお話させていただきましたが春木屋は現在、創業家の方々の管理ではなく、お店のチームで運営をする体制に変わっている状況です。その中でも、これまで通りこれまで以上にお客様に評価をいただけているということがはっきりとわかる賞をいただけたことを嬉しく思っています。

 


—先日開催した授賞式にも足を運んでいただきました。どのような印象でしたか?

 

今村家の方々(二代目ご夫妻)からも、ラーメン業界の方々とそこまで親しいお付き合いがあるわけではないと伺っておりましたし、僕自身も経営者の繋がりが強いわけではなく、ラーメン業界の重鎮と呼ばれる方々とお会いするのは初めてでした。しかし、業界の雰囲気や、有名店の店主の皆様の仲の良さを実感し、和気あいあいとお話をされていて、業界全体としてもっと良くしていこうという雰囲気があって素晴らしいと思いました。

 


—今回、ラーメン大賞を獲得された「中華そば」のこだわりについて教えてください。

 

創業73年を迎える老舗企業で、お客様に愛され続けている商品のため、常連のお客様を裏切らない味を保つことが何より大事なことだと思っています。



自家製麺は、日々変動する気温や湿度に注意を払いながら太さと固さを細かく見ており、製麺後に手揉みをして、機械ではできない手間暇をかけることが、春木屋の麺の特徴であり、愛される秘訣だと思います。そして、昔ながらのカエシの味と油とのバランスをしっかりとって作ったスープもこだわりを持っているところだと思っています。

 

—正に「いつも変わらず美味しい」と満足していただけるように「お客様の舌より、常に1歩先に行く」を体現されている春木屋の味を、丹さんご自身はどのように感じていますか?
 
独特ですよね。誰もがどこか懐かしく感じる伝統的な醤油ラーメンでありながら、どこにでもある醤油ラーメンとはちょっと違う、なんとも言い表しがたい味だなと思います。
一番上に油を張ることで、コクの深さが非常に強く出て、常に熱々の状態で食べ続けられるというのも大きな特徴だと思います。


 

新しいチャレンジ

 
—丹さんは「冷凍ラーメン通販」に対して抵抗などございませんでしたか?
 
正直なところ、”通販”に対しての知識がありませんでした。



しかし「うどん・そば」の業界にいるので、冷凍技術が日々進化していることについての理解はあったと思っています。特にそばは冷凍が上手くいかないと言われていましたが、最近はしっかりとした味のものができているなと思っていたので「冷凍通販」そのものに抵抗はありませんでした。
 

—宅麺を始められたきっかけを教えてください。
 
コロナ禍の中で事業を引き継いだこともあり、売り上げ的にもかなり厳しい状況の中だったので、このような新しいチャレンジをしていきたいという話が出ました。
冷凍ラーメン通販を取り扱っている中では宅麺さんが有名で、シェアがあると伺いましたので、宅麺さんでやらせていただくという形で話が動きました。
 

―宅麺を始めてみて、良かったと思ったことはありましたか?
 
事業承継のタイミングから近い状況でしたので、もちろん売り上げとして助かった部分もありました。また、創業家の方が中心になってお店を成り立たせていた形から、お店にいる職人全員で春木屋の味を守っていくという形の経営へと変わっていく最中での取り組みでした。



その中で、普段はお客様の目に触れない製造部の人間が中心になって取り組んでいるのですが、今回のような賞をいただけたことで誇らしい気持ちになり、チームでお店を管理するというところが上手く進んだかなと思っています。

 
 

使命を果たすために

 
—「名代 富士そば」を展開されているダイタングループさんが、どのような経緯で春木屋から事業承継されたのか教えてください。
 
2020年の夏に二代目が引退するにあたって事業承継に悩んでいるというご相談のお電話をいただきました。春木屋で10数年間顧問をしていた方が弊社の海外事業のサポートをしてくれていたというご縁もありお話をいただきました。もちろん私自身も春木屋の事を知っていましたし思い入れもありました。
 

—どのような思い入れがあったのですか?
 
昔は富士そばの事務所がいろいろなところに点在していて、阿佐ヶ谷にも事務所がありました。僕が父親(先代・丹道夫)の会社に入社して最初に阿佐ヶ谷に行ったときに「荻窪に美味しいラーメン屋がある」と連れてきてもらったんです。それから、店回りをすると寄ったりしていて好きなラーメン店だったので思い入れがありましたし、お話があった時はびっくりしました。僕自身も同じ二代目として、経営を継ぐという悩みや気持ちもすごくわかったのでお力になれるのではないかと思い話が進んでいきました。



老舗のラーメン店で決して売り上げが悪くなったからというお話ではない中でのご相談でしたし、大事なお店が無くなってしまうことはあってはならないことだと思います。我々も東京を中心にやっている会社ですので、ご縁あってお話をいただけたこと、私たちでサポートしていけることは誇らしいことだと思います。
 

―今後、春木屋以外のラーメン店の事業承継をされたり、ダイタングループとしてラーメンに関わる事業を展開することを考えてらっしゃいますか?
 
今のところは全く考えられないというのが正直な思いです。
一言に事業承継と言っても全く文化の違う会社の話ですので、かなりのマンパワーも必要ですし、僕自身もかなり勉強していかなきゃいけない状態なので、そんなに簡単にはそこへ踏み込んでいける状態ではないと思っています。富士そばを展開している以上は春木屋も同様に店舗を増やしていくと思われるのは仕方がないことだと思いますが、僕としてはとにかく春木屋の暖簾をしっかり次世代に繋げていくことが今村家から預かったミッションだと思っています。



この職人商売のやり方が現代では苦労しているという現実があるからこそお話をいただけたのだと思いますし、そこを組織やチームの力で解決していくというところで僕が必要とされたのだと自覚しています。まずは、荻窪本店と吉祥寺店に足を運んでくださっているお客様に満足していただけるラーメンを出し続けるということに専念していきたいと思っています。
 

―我々は、日本が誇るラーメンの魅力や素晴らしさを世界に発信していきたいと思っています。「日本のそばは海外では受けない」という常識を覆すため、日本の食文化を海外でブランド化するために果敢に挑戦されている丹さんは、日本のラーメン文化をより世界に広めていくためにどのようなことが必要だと思われますか?
 
7、8年間いろんな国に出て行って失敗しての繰り返しをしているため海外で飲食店の事業を成功させることが非常に難しいという現実は僕自身が1番よく理解しています。
ラーメンは海外の方々からの人気も非常に高いですし、日本そば屋を海外に持っていった僕からすれば、ラーメンはとても引きが強いためパッと食べに来る方も多いですし、「そばって何?」というような説明の部分が必要ないことを非常に羨ましく思っていました。



その中で、春木屋のような職人が作った味を守っているような業態をそのまま海外へ持っていくのはマンパワー的に難しいと思います。ハレの日や特別な日に食べる物であれば上手く行っている例をお見掛けしますが、日常食に近いものを別の食習慣を持っている方の日常食にしていくのは本当に難しいことだと思います。
本当に美味しいものを海外の方々に食べてもらってファンを増やすことも、日常食としてその国の中で文化に落とし込んでいくことも大事だと思います。そこが上手く融合していくことでラーメン文化が広がっていくのかなと思います。

 

守り続けなければならないもの

 
―昨年はコロナ禍や自粛ムードが緩和されてきて日常が戻りつつある1年でした。春木屋ではチルド麺やカップ麺への商品化や、ラゾーナ川崎プラザ店もオープンされましたが、丹さんにとって2022年はどんな1年でしたか?
 
春木屋さんから事業承継させていただいたのは2年前。中の組織作りというところに1年をしっかり費やして、僕自身も勉強をさせてもらいました。春木屋の根幹は何か、何を守るべきなのか、何は変えてもいいのかというところを理解した1年間であり、それを踏まえて我々が関わることで新しい血を入れ始められた年だったと思います。



ラゾーナの出店を通してフードコートモデルを作ることも大きなチャレンジでしたし、チームで春木屋を守っていくという意味では、より若い方々が多いエリアに進出することで春木屋に興味を持ってもらい、新しく職人として働いてくださる方を増やしていきたいという想いもありました。また、今まで今村家の方々もお店の営業に精一杯で手が回らなかった部分が、チーム運営という体勢に変わったことで、いただいたお話に対しても答えを出せるようになりました。
徐々に血が融合し、お互いの大事なところを尊重しながら次のやり方を見つけていく作業が始まった年でもあったと思います。だからこそ宅麺さんでラーメン大賞を獲得できたことは、我々にとって非常に価値があることで、より一層運営体制の転換期にとって大きな弾みになるのではないかと思います。
 

―価値のある賞として受け取っていただけて我々も光栄です。さらなるチャレンジへの構想など、春木屋さんの今後の展望や目標はございますか?
 
春木屋の味と暖簾を次の世代に伝えることが、今村家からお預かりしたミッションだと理解しています。今村家の方々も変わらずお店に来て意見をしてくれますし、息子さんも一緒に経営に携わっていますので、そういった意味では理想の形に近づいてきたと思えてきた2年目だったと思っています。富士そばも同じですが、派手な事はないんですよね(笑)



毎日の味見など、地道なことをコツコツ繰り返していくことがお店を守ることだと思っているので、それを飽きずにやり続けられる人たちと一緒に、長い期間お店と味を守る活動をやり続ける土台をしっかり作っていきたいと思います。
 

―最後に、宅麺を購入してくださっている方々に一言メッセージをお願い致します。
 
東京の荻窪ラーメンを象徴する春木屋ですが、地方からお店に来るのは時間も労力もお金もかかるので、それを宅麺さんという形で自宅に届けてもらえるのは時代の進歩だと思いますし、お店で使っている麺、スープ、具材を冷凍してお渡ししているので本当にお店の味に近い商品を提供できていると思っています。是非ご利用していただきたいと思いますし、決して多店舗化していくようなお店ではないのでいろんな方に労力を使わずに食べていただければありがたいなと思います。

 


ありがとうございます。長年多くの方から愛されてきた味とお店を守り続けるという使命感と責任感の強さに惚れ惚れしました。これからの春木屋さんの新たな改革も楽しみです!

丹さん、本日は貴重なお時間ありがとうございました!



・プロフィール


丹 有樹 代表

戦後の屋台発祥で創業70年を超える老舗「荻窪中華そば 春木屋」。
現在、2代目の引退を機に『ダイタングループ』の丹代表が事業を継承している。

時代にあわせた進化を遂げ、この先も永遠に愛される名店であることは言うまでもない。


荻窪中華そば 春木屋の中華そばは宅麺.comで


>>商品ページはこちら