店主インタビュー

【Japan Best Ramen Awards 2022|第2位】『中華蕎麦 とみ田』富田治店主 SPインタビュー


「ラーメン店主が選ぶ本当においしいラーメン」をコンセプトに開催した『Japan Best Ramen Awards』。今回は、全国の数ある有名店の中から見事第2位に輝いた『中華蕎麦 とみ田』の富田治店主にスペシャルインタビューを実施。富田さんご自身がお持ちの哲学、現在の道を歩むきっかけ、ラーメンの価値と未来についてお伺いしました。

2023年01月01日 更新
【Japan Best Ramen Awards 2022|第2位】『中華蕎麦 とみ田』富田治店主 SPインタビュー - サムネイル

喜んでもらうため

 

―今年で2回目の開催となった「Japan Best Ramen Awards」。「ラーメン店主が選ぶ本当においしいラーメン店」をコンセプトに、日本全国の有名ラーメン店主の方々に調査をした結果、「中華蕎麦 とみ田」の名前を挙げる店主さんが多く、この度見事2位に輝きました。まずは率直な感想を教えてください。

 

そう言っていただけることはもちろん嬉しいですが、自分ではあまり実感がないんですよね。



お客様に喜んでもらいたい一心で日々の営業に取り組んでいますが、それが何かの見返りになるとかいうのはあまり気にしたことなかったです。選んでくださった方々を裏切らないように、日々営業していきたいと思います。

 


―今回、多くの店主さんに本当においしいラーメンとして選ばれた「中華蕎麦 とみ田」さんですが、富田さんが思う”本当においしいラーメン”について、昨年のインタビューからお考えは変わりませんか?

 

一緒かなぁ。考えないとわからない味ではなく、わかりやすい味が好きですね。

インパクトのある味が好きです。

 


―以前、「ラーメン二郎」がお好きだとお話されていたのもそこに通ずるものがありそうですね。

 

そう。あと、お腹一杯になれるものが好き。体の仕組み的に、お腹一杯になると体が喜ぶような感覚はあるよね。満ち溢れた感じになるというか。それが美味しくても、あまり好みではないと思っても満腹になると嬉しいじゃないですか。

 


―現在の「らぁめん」や「つけめん」の形が完成するまでに苦労した点はございますか?

 

完成したとは思ってないし、今も自信はないですよ。



自分が「美味い」と思っても、お客さんが「美味い」と思ってくれるかは別だし、遠方から来てくださったり、わざわざお休みを取って来てくださっている方々がいらっしゃるのも理解してるし、そこまでして来ていただいているから喜んでもらいたいし、来て良かったなと思ってもらいたい。お客様に出せる最低限の味のものは、自分で納得して出せているけど。

 


―今後も“完成”することはないということでしょうか?

 

自分で「美味い」「完成した」と思ったら終わりだと思うからね。

とにかく、「どうやったらもっと喜んでもらえるのかな?」としか考えていない。

 


 

自覚の表れ

 

―印象に残っているお客さんはいらっしゃいますか?

 

「ラーメンヘッズ」の映画で日本のラーメンとして”とみ田”の知名度が上がったおかげで、海外からのお客様も多いです。意外と遠くから来てくださってるなと思うことはよくあります。頻繁に来てくれる人に「お近くなんですか?」って聞いたら「福岡なんです」とか「毎回飛行機乗って来てます」とか。



だからこそ、もっともっと喜んで頂けるものを作りたいという気持ちになるし、来ていただいてるというプレッシャーはいつも感じますね。

 


―富田さんがこれまでラーメンを作り続けてきて、1番嬉しかったことはなんですか?

 

仕事してても“嬉しい”という感情になることはあまりないんですよね。もちろん、美味しいって言っていただけることも、頻繁に来てくださる常連さんがたくさんいることも嬉しいんだけど。“嬉しい”というシンプルな表現ではないかな。

 


―「中華蕎麦 とみ田」さんの店内外の上品な内装や、丁寧な接客が魅力の一つでもあると感じています。現在の形態にしたきっかけはございますか?

 

「ラーメンヘッズ」の映画で、いろんな国の映画祭に行った先々で、いろんなものを食べたんだけど、海外のラーメンは1杯2,000円くらいするんだよね。そんな中、日本って未だに500円とか600円とかのお店さんもある。でも、ラーメンの発祥って日本じゃない?



だからこそ、日本のラーメン店の中で高い評価をいただいているお店として、どういう見せ方をしなきゃいけないのかと。だから、この本店には“日本らしさ”というコンセプトがあります。

 

 

色褪せない衝撃

 

―富田さんがこの道を歩むルーツとなったのが、「東池袋大勝軒」の山岸一雄さんのラーメン。初めて食べた時の衝撃は今でも覚えていますか?

 

覚えてる。当時まだ10代だったんだけど、まだ若くて豚骨が好きだから「あっさりの醤油ラーメンはちょっとなぁ」と思ってて中々行かなかったんだよね。ところが、実際に食べてみたら僕が思ってた醤油ラーメンじゃなかったんだよね。

 


―“あっさり”ではなかった?

 

そう。厳密には時間帯にもよるんだけど、僕が食べてたお昼くらいのラーメンは、ちょっと濁っていて乳化してるものだったんだよね。時間帯によって表情が変わるから。



その時から、毎月いろんなところを食べ歩いてたのが、大勝軒1択になったの。「今日も大勝軒行くぞ」と。

僕は、ちょっと濁ったフルボディなあのスープが“大勝軒”だと思ってる。

 


―富田さんが人生最後に食べたいものはなんですか?

 

もちろんラーメンだよ。

うーん、山岸マスターの特製もりそば。

最初食べた時のあの特製もりそばがもう一度食べたい。

僕のラーメン人生の原点だから。

 



変革の時

 

―今年はコロナ禍や自粛ムードが少しずつ緩和され、日常が戻りつつある1年でした。富田さんにとってはどんな1年でしたか?

 

段々と、この波風が当たり前だと思ってくるようになるんだよね。お店出した当初はいろんなことが大変だなと思っていたけど。今は大変なのがデフォルトになってて「ちょっとやそっとじゃびっくりしないぞ」と。無事今年も終われそうだなって。妥協のない1年だったな。しっかり向き合えた1年。

 


―我々は、ラーメンは日本を代表する文化であり、その美味しさや多様性、素晴らしい魅力を海外に対しても発信していきたいと考えています。ラーメン界を牽引してこられた富田さんは日本のラーメンは世界に通用すると思いますか?

 

通用しますよ。通用してるからこれだけ日本でのラーメンの地位が高まってきてると思うし、認められてきた感覚はある。そこには、海外の人気が付随してたと思うし、日本だけの人気のみではここまで来てないと思う。

 


―なるほど。

 

だからこそ、批判は承知の上で我々は値段(価値)を上げていきたいなと思ってます。価格帯の幅を持たせたいんです。安いラーメンはもちろんあっていいんだけど、2000円、3000円したっていいじゃないかと。食べるものを選ぶのはお客様ですし、そこにこだわりをもっと詰め込みたい。



僕たちは、安いラーメンを馬鹿にしたり、やめようなんて言うつもりは一切ない。もちろん、そこには需要があるし、素晴らしい文化なんだから。ただ、幅があって良いだろうとは思うし、そうじゃないと業界が良くなっていかないと思うから。

今、ラーメン業界の第1線が我々の世代になってきてるわけですよ。業界の後輩たちに明るい未来がない。寝る時間削って仕込みをしてる分も価格に転化していければね、ラーメン屋(職人)にも人生があるから。

有意義な人生を送っていただきたいし、これからはラーメン屋さんもシェフみたいなイメージでもいいんじゃないかなと思います。そういった人たちが出てきてもいいと思うし、昭和の中華そばを作るおじさんみたいな方たちがいても全然いいと思うし、それもひっくるめてラーメンだから。

 


―我々「宅麺.com」としても、ラーメンの価値は上げていくべきだと思います。

 

ただ、松戸だとご近所さんや息子世代の若い子たちも来るから、そこまで高い値段はつけられないのよ。僕は裕福な家庭で育った訳では無かったから、息子世代の子たちがお店に来た時に「1300円のラーメンは凄い贅沢な物なんだろうな」と思ってしまうし、精一杯のおもてなしをしたくなるんですよね。だから、そういう人たちもいるということは絶対忘れちゃいけないと思っています。

もう数年かけてゆっくり上げていく必要がある。

 

 

―最後に、昨年のインタビューでは、「時代に合わせて意識を変えながらいろいろ伸ばしていきたい」とお話されていましたが、富田さんご自身の今後の展望や目標は現在もお変わりありませんか?



変わらずですね。大それたことをしようとも思ってないし、今やったことしか返ってこないと思ってるから。日々の営業を精一杯頑張ります。

「一日にして成らず。」です。

 


ありがとうございます。ラーメン業界のこれからについて、富田さんの熱い想いを全身で感じました。もっとラーメンの新たな価値が受け入れられていくために、認められるために。我々も全身全霊で取り組んでいきたいと思います。

 

富田さん、本日は貴重なお時間ありがとうございました!



・プロフィール


富田 治 店主

2006年に千葉県松戸市に「中華蕎麦 とみ田」を開店。
全国に名を広く知られるようになった今でも、より良い一杯を追求し日々お店に立ち続ける姿勢は、同業のラーメン店主をも惹きつける。

「中華蕎麦うゑず」(山梨県昭和町)は、「中華蕎麦とみ田」出身の独立店。



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